善意で舗装された道をゆく

舗装された道はとても歩きやすい どこに続いているのかは知らない

follow us in feedly

学校連絡網サービスの実情

 

学校の連絡網で「固定電話がない家庭」はいったい何が問題なのか? - Yahoo! BEAUTY

 

 こんな記事が話題になっていた。案の定、ぶコメでは「固定電話ww」とか「連絡網とか古くさすぎる」といったコメントで溢れていた。

私は以前、某超大手が今でもやっている学校連絡網サービスにチョイカミしていたことがある。そこでは、使っているユーザーからの問合わせ内容などを大量に見ることができて、「なるほど、こうなるのか」と驚いた記憶がある。

現行で提供されている学校向け電話連絡網サービスといったら皆が思い浮かべるのはおそらく、「古くさい固定電話の伝言リレーの代わりに、一括送信メールなどで周知する現代的なソリューション、便利でカンタンな今時のサービス」を思い浮かべるんだと思う。ユーザーである保護者は皆、スマホに送られてくる一括送信メールで、今日の微妙な天気で運動会が本当に開催されるのかどうかを知り、伝言リレーの煩わしさからは完全に解放された素晴らしき世界。

サービスとしても当然そういうところを目指しているしそうなるようにがんばってたんだろうが、実情はそんなにスマートなサービスにはなっておらず想像以上にゴタゴタと複雑な仕組みであり、というかそんな理想通りの簡単スマートなものにできないよなあよく考えたら といったところである。連絡を受ける側の保護者はゴタゴタといろいろな設定を強いられ、連絡を送る側の学校はその管理運用でひーこら言っている。

なぜそうなってしまうのかといったら理由は簡単で、「固定電話を鳴らして相手に少々の緊急性をアピールしつつ、連絡を口頭で伝える」という要件を他のもので代替しようとすると、そこで登場するのはさまざまなタイプのスマートホンとガラケーであり、様々なドメインのメアドであり、様々な仕様の“迷惑メールフィルター”であり、それらすべてに連絡をプッシュするためにはそれぞれで適切な設定が必要になるからだ。それまで暗黙の合意として“固定電話”という一様のデバイスを全員が使っていたという事実が、実は一種の“プロトコル”として機能していた とかいう、まあよく聞く話なのである。

さらに保護者のみなさま、とくにママさんたちはみんなが思っている以上にデジタルガジェットに弱い。というか、デジタル・アレルギーを発症しているママさんはもう絶対に治らない不治の病として“機械ニガテ”と呪文のように繰り返すばっかりで、まあ無理なんである、そういう細かい設定なんか。そして、“保護者のみなさま”というセグメントで見ると、その1/3はガラケーでキャリアメールで、中には「メールはぜんぜんわからない!ショートメールしかわからない!」と怒りながら訴えてくる親御さんなども平気でいたりする世界である。そんな中でスマートな運用管理ができる連絡システムなんか不可能だ。できるもんならやってみて欲しい。

そして、連絡を受け取るのにも“学年問題”や“クラス分け問題”などもある。毎年変わる学年やクラス分け、そして“兄弟”がいる家庭。ママさんかパパさんの携帯で、兄弟の学年別、クラス別の連絡を受け取り、しかも“連絡網”だから、その連絡が“開封されたかどうか”のエビデンスも必要になる。連絡先もメールだけだと心許ないので複数の連絡先を登録させようとするとユーザーアカウントの仕組みが必要になってくる。保護者にアカウントを作らせ、連絡先をママさんのもパパさんのも、本当の緊急連絡先も登録させ、そうなると必ず「アカウント名とパスワード忘れちゃった!」という保護者が大量発生し、なぜか「固定電話で連絡くれればいいのに!」とガチギレしてくる。もうパスワードを忘れる人は機種変をしてはならない法律の整備が必要だと思う。学校側の管理もなかなか大変で、多い学校では1000人のアカウントを管理し、クラス替えの度にグルーピングを変更し、機種変をしてはアカウントとパスワードを忘れたという保護者の相手をする。学校の先生だってデジタルに強いとは限らず、先生方からwindws XPを前にして「使い方がぜんぜんわからない!」とか、「前に管理していた先生が転属になって管理者パスワードがわからない!」とかそんな問い合わせばっか。いざ、学校による訓練の一環として連絡のテスト配信などしようもんなら、保護者からの「連絡が届かない!どうなってだ!」という問い合わせでサポートの回線が毎回パンクする。それが全国の複数の学校でテスト配信の日にちが被った日にゃあ もう。

どうだ、システムの仕様をちょっと考えただけでもなかなかお腹が痛くなるだろう。「そんなもん、全員にLINE入れさせればいいだろ」と思うかもしれないが、それができたら苦労はしない。そういう世界だ。

 

いや、それらを解決する方法は1つだけある。

“すでに完璧にセッティングされた連絡網専用端末を全家庭に学校が配布する”

そうすれば解決するが、当然、その金は誰が出すのかという話になる。

1つそれに限りなく近いシステムとして、私の住んでいる品川区は子ども一人一人に“まもるっち”という防犯ブザーを配布している。月額のオプション料金も払えば通話もできるようになるプチ携帯のような端末だ。それが順当に進化すれば連絡網にイノベーしょんが訪れるかもしれない。

しかしね、そもそもメールでの連絡だと“弱い” と言うのがある。けたたましく鳴る固定電話と違い、メールだとおとなしすぎて必ず「届いてない、見てない」とかいう親が出てくるのである。

 

ほらね、そうなんでもかんでもスマートにはいかないんだよ。世の中は。

うちは最近になって固定電話をいれた。ずっと不要だと思っていて無い生活をしてきたけど、たまーに子どもたちを見てて「固定電話がないと困ることがあるかも」と思って、セーフティーネットとしていれた。そしたら、忘れてた便利さを思い出した感じがあるな。毎晩、ばーちゃんから掛かってきて、兄妹で競争しながら出る光景とか、なんかいいよ。古くからあるものをむやみに捨てる必要もないんだよね。