善意で舗装された道をゆく

舗装された道はとても歩きやすい どこに続いているのかは知らない

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漂流日記

XX月XX日

きょうもだれもこなかった。 まあそれはそうだろうと思う。ここに来る為の道標が何もないからだ。案内や地図でも無い限り、こんな辺境の地へわざわざ来る物好きなどいない。
不思議なものでこの無人島は周囲に隔てるものが何もない、どこへでも繋がっている場所のように見えて、その実どこへも繋がっていない。

まるで人の気配が感じられない。ここら辺には誰もいないのだと俺は思う。誰もいないから、誰も来ない。
聞くところによると “ネットワーク”とかいう電線みたいなものであっちへこっちへ繋がっていて、その複雑な繋がりの様から “WEB”などと呼ばれているそうだが、ウソも大概にしろと思う。そんなのはぜったい真っ赤なウソだ。適当に知ったかしてるヤツが吹いてるだけだろう。
そんなに繋がっているのならこれだけ人の気配が無いのはおかしい。なんでこんなに大きな声で話してるのに誰もこないんだ。おかしいじゃないか。

まあでも実のところ、全く人がいないってわけでも無いっぽいのに俺は気付いた。このまえこの無人島の中を散歩していた時に砂浜を発見したのだ。
そこには古びた看板に消えかかった文字で “アクセ○解○”と書いてあったが、それがこの砂浜の名前らしい。その近くになっていた星のようなカタチの黄色い果物も美味かったから、それを採るついでに砂浜に立ち寄るのが日課になった。
その砂浜には時折、人の足あとらしきものが残っている事がある。初めは俺自身の自分の足あとかと思っていたけど、よく目を凝らしたらどうやら違うようなのだ。
俺以外の誰かがこの無人島に漂着して、そしてまた去っていくのだろうか。不思議なこともあるもんだ。
それを発見してから俺はその足あとの数を数える事にした。奇妙なことに一夜明けるといつも足あとの数が変わっている。いつも黙って帰るところを見るときっとシャイな人ばかり流れ着くのだろうと思う。

“4,2,0,8,0,1,3,0,1,…”

   

俺はいつ救助されるのだろうか。
まあいい、そんなことを気にしたって始まらない。気ままにやろう。
しかし最近、妙に背中の辺りがかゆいな。なんだろう。
さて今日も星のカタチをした果物を採りにいくか。